【トレーニング以外での噛み犬の改善方法について】
トレーニングは施さず、食事改善及び生活改善によってどこまで変化をもたらすことができるかを検証するために、飼い主さんに怪我を負わせた噛み犬数頭をモニタリングしました。
結果、約3ヶ月である程度の変化を確認できましたので、ここにご報告いたします。
適切なトレーニングと併用すれば、犬の攻撃性の改善により高い効果が期待できると思います。
これにより、1頭でも多くの犬が殺処分から逃れられることを願います。
〜注意 : 頭数が少ないですし、個人的な検証なので確証のあるエビデンスではありません。ご了承下さい。〜
【犬が凶暴化する原因】
・社会性欠落
・虐待的要因
・血統的要因
・環境的要因
・脳の分泌物質欠落要因
【腸内環境の正常化とセロトニン増加】
腸は第二の脳と言われるくらい、その良し悪しがメンタルに作用する効果は大きいです。実際、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」の95%が腸で作られているという研究報告もあります。(ただし直接脳に作用することは無い?)
腸内環境が崩れると脳内のセロトニンの生成にも影響し、セロトニンが不足するとノルアドレナリンの(感情面の)コントロールがうまくできなくなり、精神状態も悪化し、不安や恐怖、怒りを感じやすくなって、ストレスが溜まりがちになり、それにより、また腸内環境が崩れていくという悪循環も生じるわけです。
レイジシンドロームの犬の場合、脳内のセロトニン量が著しく少ないという研究結果が出ています。
これは、レイジシンドロームの犬に限ったことではなく、通常の生活内で攻撃的な犬にも似たようなことがいえるのではないかと仮定して、トレーニングは施さず、食事改善及び生活改善によってどこまで変化をもたらすことができるかを検証するために、飼い主さんに怪我を負わせた噛み犬数頭をモニタリングしました。
結果、約3ヶ月で変化を確認できましたので、ここにご報告いたします。
これにより、1頭でも多くの犬が殺処分から逃れられることを願います。
【モニター犬 犬種・性別・年齢・避妊去勢を施した時期】
柴・♀・3歳・生後7ヶ月
ハスキー・♂・6歳・生後6歳(保護犬)
ブルドッグ・♂・6歳・生後8ヶ月
柴・♂・5歳・生後6ヶ月
チワワ×ポメ・♀・1歳・生後1歳
【約3ヶ月後にみられた改善例】
・ブラッシングしても怒らなくなった
・フードを与える又は片付ける際に唸らなくなった
・犬が寝ているところに近づいても唸らなくなった(触れると唸る)
・笑顔が増えた
・警戒していた相手(人)に対して反応しなくなった
・散歩が落ち着いてきた
【ストレスが原因と思われる行動の減少】
※以下の行動が減少しました
・噛み癖
・体がこわばる
・耳が後ろにさがる
・落ち着きがない
・トイレを失敗するようになった
・草や石をよく食べる
【セロトニン増加が期待できる生活改善の実施】
・朝日を浴びる(早寝早起き)
・リズム運動を取り入れる
・グルーミングスキンシップ
考察
・5軒中3軒のお宅では、日中でも室内が薄暗く陽射しが入り込みにくく、さらに内2軒では、週のほとんどで10時間程度のお留守番を強いられていました。
そのため朝のお散歩が短い、もしくは行かないという状況でした。
朝陽を充分に浴びると、脳内のメラトニンの分泌は抑制され、セロトニンの分泌が活性化されますので、短くても30分程度は朝のお散歩に出てもらうことにしました。
・一定のリズムを反復して行うとセロトニンの分泌が活性化されます。しかし、犬にリズム運動をさせることは困難です。
そこで、お散歩中に犬に寄り道をさせず、足早に歩いてもらうことで一定のリズムに近い状況を作ってもらいました。(可能な限りトロット)
【セロトニン増加が期待できる食事改善の実施】
・咀嚼させる
・低タンパク食への切り替え
・タンパク質と炭水化物の同時接種(トリプトファンを多く脳内へ)
・食物酵素の摂取
・腸内環境の正常化
・オメガ3の摂取
考察
・5頭中3頭は、ドッグフードを丸呑みしていました。人間の脳内科の医師によると、うつ病の患者は食べ物を噛まない傾向にあるとのこと。
咀嚼は前述にもあるリズム運動であり、セロトニンの活性化に役立ちます。また、犬には物を噛む欲求があるので、その解消にもなります。
また、咀嚼は胃腸を動かし、正常な消化吸収を促します。ドッグフードを噛んで食べている2頭は便の状態も良く回数も少なかったのに対し、丸呑みする3頭は、便の回数が多い・便が柔らかい・オナラをよくする、とういう結果が確認されました。よって、フードを噛まずに丸呑みする犬は腸内環境が良くないと推測されます。
・攻撃性が強くシャイな犬に、低タンパクで高炭水化物の餌を2週間与えたところ、攻撃性が低くなったとの研究結果がある。そのために今回のモニタリングでは、5頭全ての犬に対して、市販のドライフードを通常の半分に減らし、同量の白米を加えてもらった。
・前述のように、咀嚼をさせるために、ドライフードを咀嚼する程度の大粒の物に変更してもらいました。
加えて、※酵素摂取のために果物や生野菜、発酵食品の摂取のための納豆やヨーグルトをフードに加えることをお願いしました。
※食物が持つ酵素で消化を助けるために摂取。
・レイジシンドロームの犬にはセロトニンが著しく低いだけでなく、それを伝達するために必要な必須脂肪酸の欠乏もみられた。欠乏がみられた脂肪酸は、アラキドン酸・DHA・EPAのようなオメガ3と言われる脂肪酸のため、サプリメントでの摂取をお願いしました(サーモンオイル)。
※アマ二油・ヘンプシードオイル・大豆油もオメガ3(αリノレン酸)を含みますが、それをDHA・EPAに変換する酵素を犬は持っていないので、サーモンオイル・タラ肝油・イワシ油などの魚油がよい。
オメガ3 : オメガ6 の割合 1 : 10 〜 1 : 5
通常のドッグフードはオメガ6の割合が多いと言われていますので、オメガ6を摂取する必要はない。
バランスを改善して、脂肪酸を上手にあげるには、リノール酸を多く含む植物油を摂る量を減らす、α-リノレン酸とともに、EPAとDHAを増やすこと、これが鍵です。
市販フードの成分表を見る
オメガ3とオメガ6の両方の脂肪酸の代謝には同じ酵素が利用されています。そのため、両者の間で同じ酵素を奪い合うのです。オメガ3というお店とオメガ6というお店で同じ客を取り合っている状態です。
ですから、どちらかの規模が大きいともう一方の客足に影響を与えるということが起こります。つまり、どちらかの脂肪酸が多いともう一方の脂肪酸の代謝に影響し、その効果を妨げてしまいます。
ドッグフードではオメガ6が過剰摂取になる場合があります。(毛ヅヤ・フケ防止etc)
腸で生成されたセロトニンは血液脳関門を通らないため脳ニューロンに直接作用する可能性はないとのこと。(トリプトファンは通過)
脳内セロトニンを増やすためには栄養学的にはトリプトファン・ビタミンB6・鉄分の摂取が重要となる。
トリプトファンとビタミンB6が脳内の『ほう線核』で合成されることでセロトニンが生成される。
鉄分はセロトニンをはじめ、ドーパミン・ノルアドレナリンと言った、神経伝達物質の合成に欠かせない酵素(トリプトファン水酸化酵素)の働きを助けるさようがある。
トリプトファン+B6=セロトニン
鉄分はサポーター
今回はトリプトファンサプリメントの使用は無し。
過剰摂取の危険あり。通常食事での過剰摂取は考えられない。
成人一般摂取量:体重1kgに対してトリプトファン2mg (体重60kg成人の場合120mg)
うつ病改善 1000mg程度(体重60kg120mg) 約8倍
つまり体重10kgの成犬の場合 20mg✖8=160mg
過剰摂取は6000mg
一般的摂取量の50倍
薬剤との併用NG
炭水化物と同時摂取で吸収力アップ
トリプトファン摂取→セロトニン増加→伝達のためのアラキド酸、DHA、EPAの摂取
【トリプトファンの含有量が多い食品】
食品100g中
・かつお節
・にぼし
・きな粉
・わかめ
・納豆
・バナナ
【フードガードと空腹】
体型維持のため、満足する量の7〜8割程度しか与えないのが通常
→いつでも不満足→執着増大→ガード
注 : 空腹によるフードガードの改善法については、リスクを伴う方法であるため、こちらでの記述は避けます。
結果↓↓↓
丸飲みから噛むようになった
1ヶ月程度でガード減少