体罰トレーニングの効果を超無機質・超理論的に解説してみた

体罰トレーニングの効果を超無機質・超理論的に解説してみた

Q: 愛犬の噛みつき行動に困っています。訓練所へ問い合わせたところ、預けで1年〜1年半かかると言われました。そんなに長くかかるのですか?また、噛みつき犬への体罰トレーニングは効果があるんでしょうか?

噛みつき犬への体罰トレーニングについてご質問いただきましたので回答いたします。

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まず以下の回答を読んで私が体罰トレーニングを良しとしているものと勘違いしないでください!
当所は犬への苦痛0を目指しています!
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まったく感動しない犬塾の名の通り、主観を抜きにして理論的に回答させていただきます。

A: 率直に、体罰トレーニングによって噛みつき行動は改善されるのか?答えは『YES』です。
体罰トレーニングは、『正の弱化』を狙ったトレーニングで、理論的には体罰を与えることにより好ましくない行動、ここでは攻撃行動を弱めていきます。
ですが、行動が弱化される過程で『嫌子出現の阻止』という行動が起こります。つまり、犬は自分へ降りかかる不都合(痛み・不快etc)を出現させまいと行動を起こします。
それは逃避かもしれないし、逆に余計に攻撃行動を強めることもあります。(←トレーナーに預けたら余計に悪くなったというのがこのパターンです。)もしかすると自傷行為や異常行動が起こるかもしれません。
これらの行動が起こらないように、また起こりにくくするように、『正の強化』トレーニングも同時に行います。
正の強化トレーニングとは、犬が好ましい行動をとったとき、ここでは我慢するという行動を行った時に、その犬にとって好ましい条件を与える、大抵はオヤツになります。そうすることで、我慢行動が強化されます。(行動分析学では心の動きも行動と考えます)
つまり、
噛みつく→殴られる(損)
我慢する→良いことがある(得)
という対のトレーニングを行うことで噛みつきを治していきます。
理論上はこれで噛みつき行動は改善しますが、実は重要なポイントがあります。
それは、犬が納得したのかどうかということです。
噛みつき行動に体罰を加えると、大抵はそれほど長い期間を必要とせず噛みつかなくなります。一見すると治ったように感じます。
ですが、これは体罰を受けたくないから噛まないだけであって、不快刺激(触られる、ブラッシング、保定etc)を受容した結果噛まなくなったわけではないということです。
つまり、当該犬は納得したわけではないということです。
この状態でトレーニングを終えると、体罰を与えてくる相手には噛まないが、与えてこない相手には噛む。それどころか以前より悪化するという結果になります。
そんな結果にならないよう、当該犬が納得して不快刺激を受容できるよう、また不快が不快で無くなるまで『系統的脱感作』というトレーニングを施します。系統的脱感作とは、拒絶行動が出ない程度の軽い不快刺激を与え、同時に不快刺激に拮抗する好条件を提示することで、不快刺激を受容できるようにする、不快刺激を快刺激に変えるためのトレーニングです。
このトレーニングは根気のいる作業になるので長い期間を必要とします。
では、体罰を用いなくとも系統的脱感作トレーニングだけでいいではないかとも思われます。
もちろん系統的脱感作トレーニングのみでも噛みつき行動を治すことは理論上可能です。
違いは治るまでの期間の問題です。
系統的脱感作のみでトレーニングした場合と、体罰+系統的脱感作でトレーニングした場合とでは、後者の方が早く噛みつき行動の修正が可能です。
理由は、体罰により相手に行動抑制をかけながら脱感作トレーニングを進めることができるからです。
ただしこれは理論上の話であり、実際に施すには非常に高い技術が必要となるため、体罰を用いてトレーニングを成功させることはとても難しいです。
※倫理的な体罰の賛否についてはここでは追究しません。

もうひとつ、体罰トレーニングは当所のような出張タイプのトレーニングの場合は、まず成功することはありません。
なぜなら先に述べたように、体罰を行っても犬が納得する前に飼い主の元に戻るので、治らないどころか体罰を受けた分、鬱積した不満が飼い主に向けられます。

ですから、理論的に出張トレーニングでは強制・体罰トレーニングは行わない方がいいのです。

噛みつき犬のトレーニングで有名な中村訓練士が、噛みつき犬以外のトレーニングについて「ワンちゃんトレーナー」とバカにしたり、逆に中村訓練士を体罰トレーナーと中傷したりするのは、どちらも不毛なことであり、理論的ではありません。
体罰トレーニングを用いるかどうかはあくまで用いる側の倫理観であり、信念のあるなしでもなく、そもそも理論的に条件が違うということです。

上記の理由から、体罰トレーニングによって噛みつき行動は改善されるのか?の答えは『YES』ですし、体罰トレーニングを用いるのであれば、1年〜1年半預けてトレーニングを行うことは妥当だと考えます。

上記を理解した上で、体罰トレーニングを行うか否かは飼い主&ドッグトレーナー次第です。
どちらも犬が選ぶことはできません。

【愛犬の問題行動専門ドッグトレーナー】
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