子犬に教えたい【理論派パーフェクトパピートレーニングプラン】

子犬に教えたい【理論派パーフェクトパピートレーニングプラン】



子犬と暮らし始めると様々なトレーニングが必要だということに気づかされます。気づくところはもちろん、実は気づいていないところでもトレーニングが必要な機会は多くあります。
将来発現する問題行動の9割は、子犬の時期(生後6ヶ月程度)に予防できたことばかり。
今回は、困る前に知っておきたい7つのポイントをお教えしたいと思います。

①トイレトレーニング
トイレトレーニングのセオリーは、正しい場所で成功した時に報酬が出現して、失敗した時には報酬が出現しないという2つの行動随伴性によって成立します。

報酬なし→トイレ成功→報酬あり(正の強化)
報酬なし→トイレ失敗→報酬なし(消去)

この随伴性にそってトレーニングしているにも関わらず覚えない場合は、上記の随伴性が成立していないか、生理的に漏れてしまう以上に長く放置しすぎです。
随伴性不成立の要因は、オシッコを拭く雑巾にじゃれつきにきたり、サークルに入れようと追いかけっこになったり、抱っこそのものが報酬になってしまっているパターンが多いです。

②吠え
家庭内でいわゆる無駄吠えと呼ばれる吠えは、そもそも子犬を向かい入れた当初から発現していた行動ではなく、生活の中で意味を持ってしまった結果発現してしまった行動であることがほとんどです。
インターホンが鳴ると吠える、ご飯の準備を始めると吠える、サークルに入れると吠えるetc
これらの条件は、最初は意味を持たないただの音・事だったわけですが、感情が昂る喜びや不安、不満などと結びつくことで吠え行動を引き起こします。
これを古典的条件づけといいます。
無駄吠えを無くす最良の方法は予防です。
古典的条件づけの理論を把握し、子犬にどんな条件づけが成立しやすいかを前もって理解する事で、条件づけの成立を予防します。
上記が最良ですが、すでに古典的条件づけが成立してしまっている場合は、消去の作業を行います。

古典的条件づけ消去【条件刺激−無条件刺激=消去】

条件刺激とは、簡単に説明するともともとは意味を持たなかった音や事が意味を持ってしまった刺激の事で、吠えを引き起こしている刺激です。インターホンの音やご飯の準備、サークルに入れられるなどがそれです。←※わかりやすく説明しています。
そこから生得的な反応を引き起こす刺激(無条件刺激)を引きます。興奮を引き起こす来客、食欲を引き起こすご飯、不安や不満を引き起こす隔離、などです。←※あえてわかりやすく説明しています。
条件刺激から無条件刺激を抜くことで古典的条件づけは消去されます。

③社会化
社会化不足は子犬の問題行動に大きく関わってきます。
他犬を警戒する、犬語が正しく話せない、感情の抑制が効かない、世の中が不安だらけになるなど、彼らの世界を大きく狭め、犬が犬として犬らしく生きていくことを阻みます。
そのために、

・パピーパーティーへの積極的な参加
・社会的刺激への馴化

が必要です。
可能であれば、生後4ヶ月までに子犬に様々な世界を体験させましょう。その際は、子犬の反応をよく観察して、恐怖が好奇心に勝らないよう充分注意してください。
生後4ヶ月を過ぎても、子犬は勢力的に社会に関心を持ちますが、その時に重要な敵・味方のカテゴリー分けが生後4ヶ月までに形成されるので、できる限り早く未知との遭遇は終えておきたいものです。

④手入れ(ブラシ・爪・耳)
お手入れ慣れは、子犬の頃はそれほど重要視されないことが多いです。
子犬は抜け毛も少ないし病気も少ない、それに大抵のことは強引にできてしまうので、成長後の事は気にされません。
ですが、できる事と受け入れるといことは別物ということを忘れてはいけません。
嫌な経験をすれば、次はそれを避けようとします(回避行動)。避けようとしても押さえられ強引にされれば、次の機会にはもっと避けようとします。そうして拒否の行動はだんだん強まっていき、最初は強引に押さえてできていた事でもついには出来なくなってしまう。それどころか他のこともどんどん出来なくなっていきます。結果、嫌なことをされると暴れる噛みつくという行動に発展するわけです。
それを防止・改善するために
・拮抗条件づけによる系統的脱感作
の作業をしていきます。
拒絶反応が出ない程度の軽い嫌な刺激を与え、拒絶の反応が出る前に嫌な刺激を上回る良い条件(オヤツなど)を提示します(拮抗条件づけ)。
そうすることで少しづつ嫌な刺激への反応が減っていきます(系統的脱感作)。
ポイントは、拒絶行動が出るまで嫌な刺激を与えてはいけないというところです。
・行動連鎖による受容の確認
最近では犬の同意を得てから作業をするというトレーニングも目にします。これは、嫌だと思われる作業の前に「お手」などのコマンドをかけ、その後嫌だと思われる作業を開始します。
これは行動連鎖といい、「お手」の後にブラッシングなどの嫌だと思われる行為を繋げる事で、脱感作の完成を確認することができます。仮にブラッシングへの脱感作が完成されず嫌な刺激の受容がなされなければ、お手のコマンドは拒否されます。
・シェイピング
また、犬が生活の中で自発行動の発現頻度が低い行動を教えていく作業をシェイピングといい、自ら爪を出したりお腹を見せたり、その場に留まるという行動を彼らの意思により導くことも可能です。水族館でセイウチが腹筋をするパフォーマンスがありますが、あれはシェイピングによって導かれた行動です。

⑤クレートやハウストレーニング
クレートやハウスに入るトレーニングも、見落としがちな子犬のうちに教えたい科目です。
子犬のうちはあまりクレートに入れることもないし、先のように強引にでも入れられちゃうので、気づいたら入らなくなっていたなんてことはよくあります。
クレートやハウスも、=不安・不満・恐怖と結びついた古典的条件づけによって拒否されがちですから、それさえわかっていれば先と同様に消去すればいいだけです。
ハウス=閉じ込められる・ひとりぼっち・留守番・つまらない
等の嫌な場所にしないこと。
クレートも同じく、長時間の閉じ込めや、クレート=病院などの条件づけがなされないよう予防しましょう。
もし既に条件づいてしまったら、系統的脱感作で消去しましょう。

⑥呼び戻し
目の前までは戻ってくるけど、手を伸ばすと逃げる。これもよくある行動です。
犬は皆さんのことは大好きですから、呼ばれれば嬉しくて寄ってきます。でも、ブラッシングやハウスに閉じ込められるのは嫌ですから、捕まるのは嫌なんです。
これも、捕まる=嫌なことという古典的条件づけと、それによって強化された「嫌子出現の阻止」による行動です。
まず、古典的条件づけを消去しましょう。捕まえてもブラッシングもハウスもしません。
同時に、抱っこ行動を強化しましょう。呼び戻しは、捕まるまでが呼び戻しです。初めはオヤツ等で誘導して構いませんから、膝の上にのったり、首輪を掴むところまで導きます。
ポイントは、捕まっても嫌なことされないということを理解してもらうことなので、呼び戻しが完成するまでは無理にブラッシングしたりハウスに閉じ込めたりは控えてください。
そもそも、ブラッシングやハウスインは無理に行うものではありませんが。

⑦物々交換
咥えてはいけない物、または犬自身が大好きで人に渡したく無いものを取りあげるのは困難です。これも子犬の頃から教えていきましょう。
犬が自分の咥えた物を渡さずに逃げてしまうのは、当然それが彼らにとって好ましい物だからです。口から出す、人に渡すことが自分にとって不利益だからです。
これを、「好子消失の阻止による行動の強化」といいます。
例えば犬が散歩中に何か拾って口に入れました。すると飼い主は慌ててそれを取り上げます。人間は、咥えたらダメな物だから取り上げたという認識ですが、犬にしてみたら、自分にとって楽しい・美味しい物を奪われたという認識になります。ならば、次に楽しい・美味しい物を得たときには奪われまいと行動するのは当然です。
なので、口にした物を「取られたら損」ではなく「渡せば得」と思ってもらえばいいんです。
ですから、子犬のうちから、物々交換のトレーニングをしましょう。
子犬にオモチャを渡して遊ばせ、頃合いを見計らってオヤツを提示します。初めはなかなか出さないかもしれませんが、ここでオモチャを奪い取ってはいけません。そのうちポロッと落としますから、その時にオヤツをあげて物々交換しましょう。
トレーニングを進めていって、将来的には「ちょうだい」のコマンドで渡してくれるところまで行動を強化してください。
柴犬やチワワなどに多く見られるフードガードと呼ばれる行動も、物々交換交換のトレーニングで予防できます。

いかがですか?
このように、すべての行動にはそれを起こさせる理論的な背景があります。
行動理論の理解無くして問題改善はなされないし、逆に行動を起こす理論が理解できていれば、問題行動は容易に予防できます。

行動理論を基礎として、犬種・年齢・性格・ライフスタイル等に合わせたトレーニング方法をセレクトしていけばいいんです。

特に子犬の時期に上記のようなトレーニングをこなしておけば、以降10数年を問題なく過ごしていけるでしょう。

【愛犬の問題行動専門ドッグトレーナー】
エルフドッグスクール

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